クラウドストレージのセキュリティ対策5選:データを守るための具体的な方法

デジタル時代において、クラウドストレージは企業や個人のデータ管理に不可欠なツールとなっています。しかし、その便利さの裏には常にセキュリティリスクが潜んでいます。

本記事では、クラウドストレージのセキュリティの重要性や具体的な対策方法をわかりやすく解説します。

クラウドストレージのセキュリティの重要性

クラウドストレージは、多くの企業や個人がデータを保存・共有するために利用しています。

クラウドストレージの世界の市場規模は2023年に86億3,000万ドルと評価され、2024年の102億8,000万ドルから2032年までに497億5,000万ドルに達すると予測されています。当然ながら市場規模が大きくなるにつれて、サイバー攻撃のリスクも高まるのです。

セキュリティが不十分な場合、以下のような深刻な問題が発生する可能性があります。

  • データ漏洩による財務的損失
  • 顧客の信頼喪失
  • 法的責任と罰金
  • ブランドイメージの低下
  • 知的財産の流出

例えば、国内においては情報漏洩の平均コストが5億円以上になると判明しています。これほどの被害額が発生すれば、事業活動の存続を脅かすことになるでしょう。

企業においてもクラウドストレージの活用が一般的になった今、適切なセキュリティ対策を講じなければいけません。


クラウドストレージの主なセキュリティリスク

クラウドストレージは便利なツールですが、同時にいくつかの重要なセキュリティリスクを抱えています。これらのリスクを理解し、適切に対処することが、安全なクラウド利用の鍵となります。以下に、主要なセキュリティリスクについて詳しく説明します。

データ漏洩

データ漏洩は、機密情報が意図せずに外部に流出してしまうリスクのことです。ハッキングによる不正アクセス、設定ミス、内部者の不正行為などさまざまな原因で発生する可能性があります。

例えば、公開設定を誤ってしまい、機密文書が誰でもアクセス可能な状態になってしまうケースは多々見られます。データ漏洩は、企業の評判を損なうだけでなく、法的責任や財務的損失につながる可能性もあるため、特に注意が必要です。

不正アクセス

不正アクセスとは、権限のない第三者がデータにアクセスするリスクのことです。不正アクセスは多くの場合、盗まれたまたは推測されたパスワードを使用して行われます。

また、フィッシング攻撃やソーシャルエンジニアリングなどの手法を通じて、正規ユーザーの認証情報を入手し、不正にアクセスするケースも増えています。不正アクセスは、データ漏洩やデータの改ざん、さらには悪意のあるコードの挿入などにつながる可能性があります。

DDoS攻撃

DDoS(分散型サービス拒否)攻撃は、大量のトラフィックを一斉に送り込むことで、サービスを利用不能にする攻撃です。クラウドストレージサービスがDDoS攻撃を受けると、正規ユーザーがデータにアクセスできなくなる可能性があります。これは、業務の中断や顧客満足度の低下につながり、特にクラウドストレージに重要なデータや頻繁にアクセスするデータを保存している企業にとっては深刻な問題となります。

マルウェア

マルウェアは、コンピュータシステムに害を与えることを目的とした悪意のあるソフトウェアの総称です。クラウドストレージ環境では、感染したファイルがアップロードされ、他のユーザーに拡散するリスクがあります。また、ランサムウェアと呼ばれる特殊なマルウェアは、データを暗号化して身代金を要求するため、クラウドに保存された重要なデータが使用不能になる可能性があります。

インサイダー脅威

インサイダー脅威は、企業内部の人間による情報漏洩や不正アクセスのことです。これには、悪意を持って行動する従業員だけでなく、不注意によって引き起こされるセキュリティ侵害も含まれます。

例えば、機密データを誤って公開設定でクラウドにアップロードしてしまうケースや、強力なパスワードを使用しないためにアカウントが乗っ取られるケースなどが挙げられます。インサイダー脅威は検出が難しく、多くの場合、通常の業務活動を装って行われるため、特に注意が必要です。


クラウドストレージのセキュリティ対策5

それでは、どうすれば安全にクラウドストレージを利用できるのでしょうか。ここでは、クラウドストレージのセキュリティ対策をご紹介します。

データ暗号化

データ暗号化は、情報を判読不能な形式に変換することで、不正アクセスから保護する重要な技術です。クラウドストレージでは、「保存時の暗号化」と「転送時の暗号化」の2種類が特に重要です。

保存時の暗号化では、クラウド上に保存されているデータを暗号化します。例えば、AES-256ビット暗号化などの強力なアルゴリズムを使用すれば、仮に不正アクセスによってデータが盗まれたとしても、解読は極めて困難になります。

転送時の暗号化では、データがデバイスとクラウド間を移動する際に保護します。一般的にTLS/SSL暗号化プロトコルが使用されます。これにより、データの傍受や改ざんを防ぐことができます。

クラウドストレージサービスを選定する際は、どのような暗号化対策が講じられているのか確認するようにしましょう。

アクセス制御

アクセス制御は、データへのアクセスを必要最小限に制限する重要な対策です。適切なアクセス制御を実装することで、不正アクセスのリスクを大幅に軽減し、データの機密性を保護できます。

アクセス制御の実装には、主に3つの重要な原則があります。

  • 最小権限の原則:ユーザーに必要最小限のアクセス権限のみを付与します。例えば、経理部門のスタッフには財務データへのアクセス権限を与えますが、人事データへのアクセスは制限します。これにより、不必要なデータアクセスによるリスクを減らすことができます。
  • 職務分離:単一のユーザーが重要な操作を単独で実行できないようにします。例えば、大規模な資金移動を行う際に、申請者と承認者を分けることで、不正や誤りのリスクを軽減します。
  • ゼロトラストモデル:この新しいセキュリティモデルでは、すべてのアクセスを検証し、常に認証を要求します。「信頼しない、常に確認する」という考え方に基づき、ネットワーク内部からのアクセスであっても信頼せず、毎回認証を行います。

これら3つの原則を組み合わせることで、適切なアクセス制御を実施できます。

ログ監視と異常検知

ログ監視と異常検知は、セキュリティインシデントを早期に発見し、迅速に対応するために不可欠な対策です。この取り組みにより、不正アクセスやデータ漏洩などの問題を素早く特定し、被害を最小限に抑えられます。

ログ監視では、クラウドストレージ上のすべての活動を記録し、定期的に分析します。ユーザーのログイン/ログアウトやファイルのアップロード/ダウンロードなどのログを継続的に監視することで、不審な活動や潜在的な脅威を早期に発見できます。

例えば、通常業務時間外のログイン、大量のファイルダウンロード、頻繁に失敗したログイン試行などは、潜在的な脅威の兆候かもしれません。

異常検知では、機械学習やAIを活用して、通常のユーザー行動パターンを学習し、それから逸脱する行動を自動的に検出します。例えば、特定のユーザーが突然、大量のデータにアクセスしたり、普段とは異なる時間帯にログインしたりした場合、システムはアラートを発します。

強力なパスワードと二要素認証

強力なパスワードと二要素認証(2FA)の導入は、不正アクセスを防ぐための基本的かつ効果的な対策です。これらの方法を組み合わせることで、アカウントのセキュリティを大幅に向上させられます。

まず強力なパスワードとは、以下の特徴を持つものです。

  • 長さ:最低でも12文字以上、できれば16文字以上が望ましいです。
  • 複雑性:大文字、小文字、数字、特殊文字を組み合わせます。
  • 一意性:各アカウントで異なるパスワードを使用します。
  • 予測困難性:辞書に載っている単語や個人情報を避けます。

例えば、「P@ssw0rd」よりも「Tr3e_H0use_99!_Blue」の方が遥かに強力です。

しかし、強力なパスワードを覚えるのは難しいため、パスワードマネージャーの利用を推奨します。これにより、複雑で一意なパスワードを各サービスで使用しつつ、ユーザーの記憶の負担を軽減することができます。

二要素認証(2FA)は、パスワードに加えて、別の認証要素を要求することでセキュリティを強化する方法です。一般的な2FAの方法には以下があります。

  • SMSコード:ログイン時に携帯電話にコードが送信されます。
  • アプリベースのトークン:アプリで生成される一時的なコード。
  • 物理トークン:USBキーなどの物理デバイス。
  • 生体認証:指紋や顔認識など。

2FAを導入することで、仮にパスワードが漏洩しても、追加の認証要素がないとアカウントにアクセスできないため、セキュリティが大幅に向上します。

クラウドストレージを使用する際は、必ず強力なパスワードを設定し、可能な限り2FAを有効にすることをおすすめします。また、定期的なパスワード変更や、不要になったアカウントの削除など、アカウント管理の基本も忘れずに行いましょう。

従業員教育の実施

従業員教育は、人的要因によるセキュリティリスクを軽減するために不可欠な対策です。最先端の技術的対策を導入しても、それを使用する従業員が適切な知識とスキルを持っていなければ、その効果は限定的です。そのため、継続的かつ効果的な従業員教育プログラムを実施するようにしましょう。


クラウドストレージサービスのセキュリティ事故事例

2021年、内閣府が利用するファイル共有ストレージに対して不正アクセスが行われ、231名分の個人情報(氏名、所属、連絡先など)が流出しました。

この不正アクセスは、ストレージの脆弱性を突かれたことによって発生しました。攻撃者は、ストレージ上のファイルに対して不正操作を行うことが可能になり、その結果として個人情報が漏洩したのです。内閣府は、2021年1月にこの不正アクセスを検知し、直ちにストレージをネットワークから遮断し、利用を停止しました.

流出した情報には、内閣府、内閣官房、復興庁、個人情報保護委員会の職員に関するデータが含まれており、これにより関係者のプライバシーが侵害される事態となりました。

この事件は、クラウドストレージの利用におけるセキュリティリスクを再認識させるものであり、特に公共機関においては情報管理の徹底が求められています。ユーザー側の設定ミスやサービス側の脆弱性に対する対策が必要であり、今後のセキュリティポリシーの見直しが期待されています

まとめ

クラウドストレージのセキュリティ対策は、技術的な面だけでなく、組織的な取り組みも重要です。本記事では5つの対策をご紹介しましたが、まずはアクセス制御、強力なパスワードの徹底、二要素認証の導入を実施しましょう。これら3つの対策はすぐに実行でき、クラウドストレージのセキュリティを大幅に高めます。

ただし、高度化するサイバー攻撃の前では、どれだけ最先端のセキュリティ対策をしても、サイバー攻撃の被害に遭う可能性は十分にあります。

そこで、新たな対策として注目を集めているのが「ダークウェブ監視」です。ダークウェブとは、通常のインターネット検索エンジンでは見つからない、匿名性の高いウェブ空間のことを指します。サイバー犯罪者たちは、この空間で盗取した情報の売買や、攻撃の計画を行っています。

ダークウェブ監視サービスは、このような隠された空間を常時監視し、御社に関連する情報が取引されていないか、または攻撃の標的になっていないかをチェックします。これにより、情報漏洩や攻撃の兆候を早期に発見し、迅速な対応を取ることが可能になります。

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