多くの企業がクラウドサービスやWebサイトを通じて機密情報や取引を扱う現代において、ログインアカウントは企業活動に不可欠な要素となっています。しかし、サイバー攻撃の高度化に伴い、ログインアカウント流出のリスクも大幅に増加しているのです。
ログインアカウント流出を防ぎ、データを保護するために、企業は必要な予防措置を講じ、ダークウェブの監視を含む適切なセキュリティ対策を実施しなければいけません。本記事では、ログインアカウント流出の原因となるサイバー攻撃や主な被害、ダークウェブ監視の重要性を解説します。
ログインアカウントの重要性
ログインアカウントの流出は企業に大きな損失をもたらします。ユーザー名やパスワード、電子メールアドレスなどのログインアカウント情報が流出すると、サイバー犯罪者はその情報を使って機密データやシステムへ不正にアクセスできます。
その結果、企業は金銭的な損失やブランド毀損、顧客からの信頼の損失、法的な影響を受ける可能性があるのです。例えば、ログインアカウントの流出が原因でランサムウェアの被害に遭うと、調査・復旧に1,000~5,000万円という膨大な金額がかかる可能性があります。
企業はログインアカウントの重要性を理解したうえで、適切な対策を講じなければいけません。
ログインアカウント流出の原因となる主なサイバー攻撃
ここからは、ログインアカウント流出を引き起こす主なサイバー攻撃の概要と企業への影響について解説します。
フィッシング攻撃
フィッシング攻撃は、銀行やECサイトなど正規の送信元になりすました偽のメールを配信する手法です。メールには被害者を偽のログインページに誘導するリンクが含まれており、リンク先で認証情報を入力するよう求められます。被害者がログイン情報を入力すると、攻撃者はその情報を使ってアカウントにアクセスできる仕組みです。
マルウェア攻撃
マルウェア攻撃とは、キーロガーやトロイの木馬など悪意のあるソフトウェアを使用して、ログイン情報を盗み出す手法です。
キーロガーは、コンピュータ上で行われるすべてのキーボード操作を監視・記録することで、ユーザーのログイン情報を盗み出します。
トロイの木馬は、正規のソフトウェアになりすましたソフトウェアを、被害者のコンピュータにインストールすることにより、攻撃者がログイン情報またはその他の機密情報にアクセスできるようにします。
ソーシャルエンジニアリング攻撃
ソーシャルエンジニアリング攻撃とは、心理的な操作で個人を騙し、ログイン情報を開示させる攻撃です。このような攻撃は、偽のカスタマーサービスの電話や仕事依頼などさまざまな形で行われます。
攻撃者はしばしば、ソーシャルメディアのプロフィールなど、一般公開されている情報を使って、攻撃をより説得力のあるものに見せかけます。
BEC(Business Email Compromise)攻撃
BEC攻撃とは、攻撃者が役員やベンダーになりすまし、電子メールを使って従業員を騙してログイン情報を開示させたり、資金を振り込ませたりする手法です。BEC攻撃は、一般的なビジネスコミュニケーションに見せられるため、被害者はだまされやすい傾向にあります。
また、攻撃者はソーシャルエンジニアリング攻撃などから収集した情報を使って、メールの内容をより説得力のあるものにするケースがあります。
SQLインジェクション攻撃
SQLインジェクション攻撃とは、Webアプリケーションの脆弱性を悪用し、悪意のあるSQLコードをデータベースに注入する攻撃です。このコードは、ログイン情報などの機密情報を引き出すために使用される可能性があります。
クロスサイト・スクリプティング(XSS)攻撃
XSS攻撃は、悪意のあるコードをウェブサイトに注入し、そのコードをサイト訪問者が実行すると、悪意ある内容が実行される攻撃です。このコードは、ログイン情報やその他の機密情報を盗むために使用されることがあります。
ログインアカウント流出による被害一覧
ログインアカウントが流出した場合、その被害は深刻で広範囲に及ぶ可能性があります。ここからは、ランサムウェアやBEC、機密情報の流出、Web改ざんなど、ログインアカウントの流出によって引き起こされるさまざまな被害についてご紹介します。
ランサムウェア
ランサムウェアとは、被害者のコンピュータ上のファイルを暗号化し、身代金を支払うまでアクセス不能にする悪意あるソフトウェアの一種です。ログイン情報流出の場合、サイバー犯罪者は盗んだログイン情報を使って企業のネットワークにアクセスし、ランサムウェアを展開することで、身代金を支払うまで企業データを人質にできます。
BEC(Business Email Compromise)
ログインアカウント流出がBECを招く可能性があります。例えば、攻撃者は企業の幹部や従業員になりすまし、無防備な個人に機密情報を公開するように促すことがあるでしょう。ログインアカウントが流出すると、サイバー犯罪者はそのアカウントを使用して、より効果的なBEC攻撃を行えます。
機密情報の流出
サイバー犯罪者は、盗んだログイン情報を使って正規のユーザーになりすまし、機密情報へのアクセスと盗難をします。機密情報の盗難は、個人と企業の双方に深刻なダメージを与えます。
Web改ざん
Web改ざんとは、Webサイトのコンテンツを不正に改ざんすることです。ログインアカウントが流出すると、サイバー犯罪者はそれを悪用し、企業のウェブサイトにアクセスして改ざんします。結果、風評被害やビジネスの損失を引き起こす可能性があるのです。
データ流出
データ流出は、機密情報や保護された情報が悪意ある第三者によってアクセスや閲覧、盗難、使用されることです。データ流出は、簡単なパスワードやシステムの脆弱性、マルウェア、内部脅威、フィッシング、ソーシャルエンジニアリング攻撃など、さまざまな理由で発生します。
データ流出がもたらす被害は、深刻かつ長期に及ぶ可能性があります。金銭的損失やブランド評価の低下、顧客の信頼喪失、法的罰則、コンプライアンス上の問題などにつながる可能性があるため、「データ流出防止」と「被害範囲の最小化」の2つのアプローチが必要です。
知的財産の流出
多くの企業が、貴重な特許や企業秘密などの知的財産をデジタル化していることでしょう。ログインアカウントが流出すると、悪意ある第三者によって知的財産の盗難や流出が発生するリスクがあります。例えば、流出した知的財産が競合他社の手に渡れば、企業は大きな損失を受けるでしょう。
ログインアカウントの流出を防ぐ方法
本記事で述べたように、ログインアカウントの流出は企業に深刻な損害を与える可能性があります。このような攻撃を防ぐためには、予防策を講じることが肝心です。ここでは、企業がログインアカウント流出を防ぐ方法について説明します。
強力なパスワードの作成
ログインアカウントの流出を防ぐ最も効果的な方法の1つは、強力なパスワードの作成です。簡単なパスワードは簡単にハッキングされてしまうため、従業員には複雑で長いパスワードを作成するように促しましょう。また、パスワードの使いまわしもログインアカウント流出のリスクを高めます。
二要素認証の有効化
二要素認証(2FA)を有効にすれば、ログインアカウントにさらなるセキュリティ層を追加できます。二要素認証とは、ログイン時にユーザー名とパスワードに加えて、携帯電話に送信されるコードなどの追加情報の提供をユーザーに要求する手法です。これにより、ログイン情報が流出したとしても、攻撃者がアカウントにアクセスすることが困難になります。
セキュリティソフトウェアの導入
ログインアカウントの流出を防ぐには、セキュリティソフトの導入が効果的な対策のひとつです。ログインアカウントの流出を防ぐためのセキュリティソフトには、以下のような種類があります。
【マルウェア対策ソフト】
ウイルスやスパイウェア、アドウェアなどの悪意のあるソフトウェアからデバイスを保護するソフトウェアです。マルウェアは、ログイン情報を盗んだり、デバイスを制御したりして、サイバー犯罪者が企業や従業員のアカウントにアクセスしやすくします。マルウェア対策ソフトは、お使いのデバイスをスキャンし、悪意のあるソフトウェアを削除します。
【ファイアウォール】
ファイアウォールは、デバイスとインターネットの間の障壁として機能し、デバイスへの不正アクセスを防止して、悪意あるトラフィックをブロックします。ファイアウォールを導入すれば、ログイン情報を盗もうとする試みをブロックし、ログインアカウントの流出を防げます。
【仮想プライベートネットワーク(VPN)】
VPNは、インターネットトラフィックを暗号化し、安全なサーバーを経由してトラフィックを送信します。VPNはIPアドレスと場所を隠すため、サイバー犯罪者があなたのオンライン活動を追跡したり、あなたのログイン情報を傍受したりすることを困難にします。
VPNは、お使いのデバイスとインターネットとの間に安全な接続を提供することで、ログインアカウントの漏えいを防げます。
【パスワードマネージャー】
パスワードマネージャーは、オンラインアカウント用の強力でユニークなパスワードを生成して保存するツールです。また、ログイン情報を自動入力することで、入力時間の短縮や入力ミスのリスクを軽減します。パスワードマネージャーは、各アカウントに強力なパスワードを付与することで、ログインアカウントの漏えいを防ぐのに役立ちます。
セキュリティソフトの導入に加え、ソフトウェアやデバイスを最新のセキュリティ状態に更新しておくことが重要です。サイバー犯罪者は、古いソフトウェアの脆弱性を利用してデバイスにアクセスし、ログイン情報を盗み出すことがよくあるためです。
従業員への教育
ログインアカウントの流出を防ぐには、従業員教育が重要です。従業員には、強力なパスワードの作成やフィッシングメールの識別、ソーシャルエンジニアリングなどについて教育しましょう。また、会社のリソースを安全に使用する方法や、疑わしい活動を報告する方法についても教育するのが有効です。
ログインアカウントの定期的な監視
ログインアカウントを監視することで、不正なアクセスを特定し、被害の拡大を防げます。企業は、ログイン操作に目を配り、不審な動きが検出された場合に対処できるように準備しておきましょう。
ログインアカウントの流出対策だけでは不十分な理由
急速に高度化するサイバー攻撃の前では、どれだけ外部からの攻撃対策をしても、知らない間にログインアカウントが流出する可能性が十分にあります。
その証拠に、私たちがダークウェブ監視ツール「ダークトレーサー(DarkTracer)」を用いて、国内100大企業のデータ流出状況を調査した結果、すべての企業でダークウェブへの情報流出を確認できました。
これからのサイバーセキュリティ対策では、攻撃対策と被害拡大を抑える対策が必要です。そして、被害範囲を最小限に抑える方法として有効なのがダークウェブ監視。
ダークウェブとは、一般的なウェブブラウザではアクセスできず、アクセスするためには特定のソフトウェアや設定を必要とするウェブサイトの集合体です。
ユーザーが匿名になれるため、盗んだログイン情報や機密情報の売買などが行われています。ダークウェブは企業にとって大きな脅威だからこそ、定期的にダークウェブの監視をして、被害を最小限に抑えなければいけません。
まとめ
ログインアカウントの漏洩を防ぐために、企業は複雑で長いパスワードの作成、二要素認証の有効化、ファイアウォールやマルウェア対策ソフトウェアの使用など、強力なセキュリティ対策を実施する必要があります。
しかし、このような対策を行っても、意図せずログインデータが流出するリスクは常に存在します。被害を最小限に抑えるためにも、定期的にダークウェブを監視することが極めて重要です。
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