DDoS攻撃とは┃仕組みやリスク、対策ポイントまで解説

突然のアクセス不能、サイトのダウン、そして顧客からのクレーム。

これらは全てDDoS攻撃によって引き起こされる可能性があります。DDoS攻撃とは、大量のトラフィックをサーバやネットワークに送り付け、サービスの停止を目的とした攻撃のことです。

これまでに多くの企業がDDoS攻撃の被害に遭い、サービス停止による売り上げの大幅な低下やブランドイメージの低下を経験しています。しかし、その仕組みやリスク、そして具体的な対策については、まだまだ知られていないことが多いのが現実です。

本記事では、DDoS攻撃の基本から仕組み、対策ポイントまでをわかりやすく解説します。

DDoS攻撃とは

DDoS攻撃(Distributed Denial of Service攻撃)とは、分散型サービス拒否攻撃のことで、複数のコンピュータから一斉に大量のトラフィックを標的に送信し、サーバやネットワークを過負荷状態にする攻撃手法です。サーバやネットワークを停止させることで、ユーザーがサービスを利用できなくなる状況を引き起こします。

DDoS攻撃は、一般的に悪意を持つ攻撃者が、ターゲットとするウェブサイトやネットワークを機能不全に陥れることを目的としています。例えば、2016年に発生したDynへのDDoS攻撃は、多くの主要なウェブサイト(Twitter、Spotify、Redditなど)が一時的にアクセス不能になるという深刻な影響を及ぼしました。このような攻撃は、標的のサーバが大量のリクエストに対応できず、正当なユーザーからのアクセスが拒否される状況を生み出します。

DDoS攻撃の典型的な手法としては、SYNフラッドやUDPフラッドなどがあります。SYNフラッドでは、攻撃者が大量のTCP接続要求(SYNパケット)を送信し、ターゲットサーバのリソースを枯渇させます。UDPフラッドでは、大量のUDPパケットを送信し、ネットワーク帯域を占有することでサービスを停止させます。

 DDoS攻撃の仕組み

DDoS攻撃は、多数のコンピュータやデバイス(ボットネット)を使って一斉に標的にトラフィックを送信することで実行されます。攻撃者は、まずマルウェアを使用して多くのデバイスを感染させ、これらのデバイスを遠隔操作できるようにします。この感染したデバイス群が「ボットネット」と呼ばれ、攻撃者はこのボットネットを使って一斉に攻撃を実行するのです。

攻撃のステップは以下の通りとなります。

  1. 攻撃者は電子メールや悪意のあるウェブサイトなどを通して、マルウェアを広範囲に拡散し、多数のデバイスを感染させる
  2. 感染したデバイス(ボット)が攻撃者のコマンド&コントロール(C&C)サーバに接続し、攻撃命令を受ける
  3. 攻撃者が標的に対して大量のトラフィックを送信するように命令を出すと、ボットネットは一斉に標的サーバに過剰なリクエストを送り込む
  4. 標的サーバは過負荷状態に陥り、サービスが停止する

DDoS攻撃の被害リスクと影響

それでは、DDoS攻撃によってどのような被害と影響が生じるのでしょうか。ここからは、被害リスクの詳細を見ていきましょう。

ビジネスへの影響

DDoS攻撃によってオンラインサービスが停止すると、直接的な売上損失や間接的な信頼損失を被ることになります。例えば、Eコマースサイトが攻撃を受けてダウンすると、顧客は購入を完了できないため、売上が大幅に減少します。また、サービス停止が長引いた場合、顧客は競合他社に流れる可能性があり、企業の信頼性にも影響を及ぼします。

顧客への影響

サービス停止は顧客にも大きな影響を及ぼします。特に金融サービスや医療サービスなど、重要なサービスが停止すると、顧客の生活や健康に直接的な悪影響を与える可能性があります。例えば、オンラインバンキングが停止すると、顧客は資金の移動や支払いができず、日常生活に支障をきたすでしょう。

ブランドイメージの低下

DDoS攻撃によるサービス停止は、企業のブランドイメージにも悪影響を与えます。顧客は信頼できないサービスを避ける傾向にあり、一度失った信頼を取り戻すのは容易ではありません。ブランドイメージの低下は、長期的な売上減少や市場競争力の低下を招く可能性があります。

DDoS攻撃の対策

ここでは、DDoS攻撃の対策方法をわかりやすく解説します。

トラフィックの分散

DDoS攻撃では、サーバに大量のトラフィックが集中することが原因でサービスの停止が生じます。つまり、トラフィックを分散することで、攻撃を受けてもサービスの停止を防げるのです。

例えば、CDN(コンテンツ配信ネットワーク)やロードバランサーを利用すると、攻撃トラフィックが複数のサーバに分散されます。これにより、特定のサーバに過剰な負荷がかかるのを防ぎ、サービスの継続が可能になります。

また、CDNは世界中に配置されたサーバを利用してコンテンツを配信するため、攻撃者が特定のサーバに負荷を集中させるのを難しくします。一方、ロードバランサーは受信したトラフィックを複数のサーバに均等に分配する役割を果たします。

攻撃トラフィックのフィルタリング

DDoS攻撃トラフィックを早期に検知し、フィルタリングすることも有効な対策です。例えば、専用のDDoS防御サービスを利用すれば、リアルタイムで異常なトラフィックを検出し、攻撃トラフィックをブロックすることができます。そのため、攻撃が本格的にサーバに到達する前に対処することが可能です。また、ネットワーク機器にフィルタリングルールを設定すれば、特定のIPアドレスや異常なトラフィックパターンをブロックすることができます。

ネットワーク構成の強化

ネットワーク構成を強化することで、DDoS攻撃に対する耐性を高めることができます。

例えば、冗長性を確保することで、一部のサーバが攻撃を受けても他のサーバがサービスを継続できるようになります。冗長性とは、同じ機能を持つ複数のサーバやネットワーク機器を用意しておくことです。

これにより、一つのサーバが攻撃されても、他のサーバが代わりにサービスを提供することができます。また、ネットワークセグメンテーション(ネットワークを複数のセグメントに分割)を実施することで、攻撃の影響を限定的に抑えられます。一つのセグメントが攻撃を受けても、他のセグメントには影響が及びません。

監視とインシデント対応計画

24時間体制でのネットワーク監視とインシデント対応計画の策定は、DDoS攻撃を早期に発見し、迅速に対応するために重要です。専門の監視チームを配置することで、異常なトラフィックパターンや攻撃の兆候をリアルタイムで検出できます。

異常検知システムを導入すれば、ネットワークのトラフィックを常に監視し、異常が発生した場合に自動的にアラートを受信できます。十分な人的リソースがない場合、異常検知システムの導入がおすすめです。

また、セキュリティインシデント発生時の対応手順を事前に策定しておきましょう。そうすることで、攻撃が発生した際に迅速かつ効果的に対応することができます。例えば、DDoS攻撃を受けた際の対応手順として、攻撃のトラフィックを遮断する、攻撃元のIPアドレスをブロックする、サービスの再構築を行うなどの具体的なアクションプランを準備しておくと良いでしょう。

DDoS攻撃の実例とその対策

2016年に発生したMiraiボットネット攻撃は、主にIoTデバイスを標的としました。Miraiは、ネットワークに接続されたカメラやルーターなどのIoTデバイスを感染させ、これらのデバイスをボットネットに組み込むマルウェアです。Miraiは、デフォルトの管理者パスワードを持つIoTデバイスを狙い、これらのパスワードを使ってデバイスに侵入します。

この攻撃のターゲットとなったのは、DNSサービスプロバイダのDynです。DNS(Domain Name System)は、インターネット上で使用されるドメイン名とIPアドレスを対応付ける役割を果たします。Dynが攻撃を受けた結果、Twitter、Netflix、Redditなど多くの主要なウェブサイトが一時的にアクセス不能となりました。この攻撃の特徴は、膨大な量のトラフィックが一斉にDynのサーバに送りつけられたことで、サーバが過負荷状態になり、サービスが停止してしまった点にあります。

このような攻撃に対する対策としては、まず、IoTデバイスのセキュリティ強化が挙げられます。デフォルトパスワードの変更やファームウェアのアップデートを徹底することで、ボットネットの形成を防ぐことができます。また、攻撃を受けた場合には、トラフィックの分散やフィルタリングを迅速に行い、影響を最小限に抑えることが重要です。

まとめ

DDoS攻撃は、企業やサービスプロバイダにとって重大な脅威となる攻撃手法です。被害を受けた場合、サービス停止による売り上げの減少だけでなく、顧客の信頼の喪失やブランドイメージの低下など、広範な影響が及びます。攻撃の仕組みや影響を理解し、適切な対策を講じることで、被害を最小限に抑えることが可能です。

特に、ダークウェブの監視は、攻撃計画の早期発見に役立ちます。ダークウェブはサイバー犯罪者が情報を共有し、攻撃計画を立てる場となっています。定期的にダークウェブを監視することで、潜在的な攻撃の兆候を捉え、迅速な対策を講じられるようになります。

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